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Electrophysiology Specification Computer and me

English

                               電気生理実験仕様コンピュータと私

 

  ここに紹介した電気生理実験用ソフトウエア(アプリケーション)は ナショナルインスツルメントの LabVIEW (Laboratory Virtual Instrument Engineering Workbench) でプログラムされています。ご存知のように、LabVIEWはアプリケーションではなく、プログラミング言語です。しかし、Basic や C 言語のようにテキスト行でプログラムするのでなく、アイコンを使用してアプリケーションを作成するグラフィカルなプログラッミング言語です。多くの実験計測機器を扱う電気生理学とっては、仮想計測器 (VI) を 扱うLabVIEW 言語は素晴らしい言語です。私は 1988 年にこのグラフィカル言語を米国で見つけました。実験機器が高額で買えなく、実験できなかった当時、このプログラミング言語を見つけたときは嬉しかったです。早速、このLabVIEW言語を駆使して、データの取り込み、記録、及び解析ソフトを作り、電気生理学の研究を続けました。

 

 私が電気生理実験仕様のコンピュータと出会ったのは、1970年、米国留学先のKrusen Research and Engineering Center, Moss Rehabilitation Hospital, (Philadelphia, School of Medicine, Temple University, Professor R. Herman) で使用していたPDP-11です。当時、最先端の実用コンピュータで、これを使いこなすために、徹夜で英語のマニュアルに取り組んだのを懐かしく思い出します。電気生理実験仕様のコンピュータは、データの取り込み用のソフトとそのデータを解析するソフトが必要で、研究目的に合わせたデータの取り込み、及びそのデータ解析プログラムを作るために、当時の研究所の主役はシステムエンジニアでした。研究所のスタッフも、医学部出身の主任教授と私以外は、全て工学部(ドレクセル大学)から来ていました。人、及び動物で”伸張反射”の実験が出来ると言うのが私の立場でした。

 

  その後、日本でも1975年ごろに電気生理実験仕様のコンピュータが販売されましたが、高額で全く手が出ませんでした。幸い日本光電からATCA2300を貸してもらい、再びコンピュータを使用しての研究に取り組みました。ATCA 2300 が日本ミニコンピュータを使用していた関係で、その会社のカスタマー・トレーニング・スクールに行き、コンピュータのアセンブル言語を学ぶ機会もありました。しかし、残念ながらこのコンピュータは大学の高額機器購入のサポートが得られず、折角の、日本製の素晴らしい電気生理実験用コンピュータでしたが失恋してしまいました。

 

  コンピュータがなくなって途方に暮れていた1982年の春、慶応義塾大学で開催された日本生理学会で、ロックフェラー大学の浅沼先生の脳神経生理の講演を聞き、改めて脳神経生理学を目指すことにしました。直ちに、浅沼先生に手紙を書いて留学することができました。そこにはコンピュータはなかったですが、手作りの電極と様々な工夫で脳内の神経活動情報を記録、解析されており、手作りとアイディアで研究を進める科学の基本を学びました。和歌山に帰ってからは、和歌山県立医科大学出身の若い学徒に恵まれ、微小電極を用いて脳神経の研究を続けることができました。

 

 しかしながら、私の脳の研究にはどうしてもコンピュータが必要でした。そこで、自分でデータの取り込み、及びデータ解析ソフトを作ることにし、適当なコンピュータとプログラム言語を探すことにしました。まさにその矢先でした。何回か訪れたロックフェラー大学からの帰りに、最初に米国で世話になった R. Herman 教授の転任先のアリゾナ大学に立ち寄って、LabVIEW(グラフィカルプログラミング言語)に出会いました。1988年のことです。それを見たとたん、そのプログラム言語の秀逸さに驚き、目が点になりました。早速、大学に戻って、LabVIEW 3 を手に入れ、貪るようにその言語を解読し、実験目的に沿ったデータの取り込み、及びそのデータ解析プログラムを作製しました。この言語は実に電気生理実験のプログラムを作製するのに適していました。お陰で、多チャンネルのデータを取り込こんで、そのデータを同時に解析できるソフトを作成することができました。中でもノイズに埋もれた神経スパイクを検出するソフトは秀逸で、脳内に慢性に埋め込んだ6〜8本の微小電極から、同時に多くの神経スパイクを得る(一つの微小電極から5〜6個のニューロンススパイクを検出)ことが可能となりました。その結果、大小の多くのスパイクの解析によって、脳の入出力に関する次のような実験結果を得ることができました。

 

  すなわち、視覚入力を受ける感覚野には、ほぼ同じ領域に固有の運動領域があり、その感覚特有の運動出力がある。    この結論を他の感覚にも普遍的に適用すれば、体制感覚以外の感覚(視覚、聴覚、臭覚、味覚)による運動は、いわゆる運動野(4 野)と云われる部位を経由して起こるのではなく、自身の感覚領域に特有の運動出力があり、その運動出力が結果的に体制感覚を刺激し、体制感覚運動システムによって運動全体が制御される。したがって、体制感覚野、及びその運動野(4 野)は、解剖学的に他の感覚運動システムの領域より大きく、際立って発達していると考えられる。(下記の文献参照)

1) Yasuhiko Tamai, A proposed reorganization of the cortical input-output system. Progress in Brain Research, 1132 (1996) 357-384

 2) Yasuhiko Tamai and Akihisa Kimura, Multiple integration of input and output in the cortex, Neuro Report, 7 (1996) 2401-2405

 

                        あ と が き

 ここに紹介したソフトウエアは、全て神経・筋電気生理学研究用のソフトで、実際に研究に使用したソフトを改良したものです。ノイズに埋もれた小さな神経スパイクを抽出する優れた回路も組み込まれています。高価な電気生理機器が買えなくて、随分苦労したことを思い出しながら、電気生理実験を志す研究者のお役に立てばとホーム頁で紹介しました。ここに掲載したソフトには、データの取り込みから、その解析まで揃っていますが、実際にはそれぞれの実験でデータの解析方法が異なり、研究者の実験に固有なソフトが必要となりますから、可能な限りその要求に応えようと思っています。どうぞ気軽にご相談ください。 

YTLソフト制作者プロフィール

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